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4.群と体の関係

体の拡大が、群によって記述される、という雰囲気が少し漂ってきたと思います。

Gal(Q(√2)/Q)=S_2の例をもう少し見てみます。
Q(√2)/QのしたのQは、S_2の変換で固定されています。動くのは添加した√2に関するところだけです。
ガロア群は、変換で動くものと動かないものを分別しています。

S_3の場合、群が少しS_2と比較して複雑になっていて、部分群C_3が含まれています。
x^3-2=0のガロア群はS_3ですので、分解体L=Q(b1,b2,b3)(上の例の記号を使いました)とすると
Gal(L/Q)=S_3
です。そして、Lの元で、S_3で固定される体がQということになります。
さらに、Lの元でC_3だけで固定される体Mというものも考えることができます。MはQを含み、Lに含まれます。
拡大L/Qの中間に位置するので中間体(intermediate field)といいます。

ガロア理論の基本的な定理は、ガロア拡大L/Kがあったとき、
{L/Kの中間体} {Gal(L/K)の部分群}
という(逆)対応があるというものです。


5.解の公式の存在(雰囲気)

4では、部分群から固定される中間体という方向で見ましたが、
冪根による拡大に対応する、ガロア群の部分群という見方もできます。
冪根による拡大は、x^n-a=0の分解体ですが、このタイプの分解体のガロア群は巡回群であることが知られています。
3次方程式の場合、ガロア群がS_3で巡回群C_3を含んでいましたが、これは3次の冪根を追加することを示唆しています。
S_3は6個の要素を含みますが、3次方程式の分解体は6次の拡大体です。3次の巡回群に対応する中間体Mは、Qの2次拡大になります。
3次の冪根を追加して、2次方程式を解く、という手順を示しているといえます。

群が、巡回群を積み上げて作られるとき、可解群(solvable group)といいます。
冪根による拡大に対応する群が巡回群であることを考慮すると、
冪根拡大を積み上げてできる拡大体のガロア群は、可解群であると想像できます。(雰囲気)

したがって、解の公式の存在は、方程式のガロア群(これは方程式の分解体のガロア群だった)が可解群であるかどうかで判別できることになりました。
ガロア群は有限群なので、最低限しらみつぶしに調べればすみます。

ちなみに、n>=5のとき、S_nは可解群ではないことが知られており、その帰結として、5次以上の方程式で、解の公式が存在しないものがあることがわかりました。


6.終わりに

まあ、すごいですね。たかだか高校生くらいの時に、こんなすごいことを軽くやってしまうなんて。
ここでのガロア理論は、狭義のガロア理論であり、この理論展開のパターンはガロア以後の数学の鉄板になりました。
群の発見。体のカテゴリーと群のカテゴリーの函手の定義と、カテゴリー的な理論展開、、、
ガロア後の数学はガロア数学といってもいいのではないでしょうか。